7月4日に第9回公判がありました。

傍聴記をお伝えします。

弁護側申請の目撃証人の証言と補充の被告人質問が行われました。

これまでの公判情報から得た情報ですが、起訴状では犯行は2006年9月13 日 午 後10時8分から午後10時10分の間に行われたとされています。

犯人は電車進行方向に向いて立っていた被害者の真後ろに被害者と同じ方向を向 い て 密着して立ち、両手を被害者の臀部側面につけていたとされています。

昨日証言した証人は、たまたま同じ電車に乗り合わせた乗客で、電車に乗った時 に 被 告人に気付き、電車が出発する時点では植草一秀氏であることをはっきりと認識 し たと証言しました。

事件当日に被告人が男二人につかまれて蒲田駅で電車を降ろさ れ たのを見た時には、電車が揺れた際に被告人が誰かの足を踏むなどして絡まれて、 被 告人が男二人に蒲田駅で電車から降ろされたと感じており、翌日ニュースで痴漢事 件だったを聞いた時には、とても変だと感じていたと証言しました。

証人は品川駅出発時点から青物横丁を過ぎるあたりまでは、被告人の様子をしっ か りと見ていました。被告人はセルロイドフレームの眼鏡をかけ、右手で吊り皮につ か ま り、右肩にショルダーバッグをかけて、うなだれて酔って疲れた様子で立ってい た と 証言しました。被告人のそばには女性は見えず、誰とも密着していなかったと証 言 しました。

証人は青物横丁から大森海岸駅あたりまではうとうととした状態になり、女性が 声 をあげたことなどには気付かなかったと証言しました。

大森海岸駅あたりで何か騒がしい感じがして見ると、自分の右前に立っていた男 性 が移動して被告人の上からおおいかぶさるようにつかんでいるのが見え、そのあと 、 も う一人の男性が右奥から声をあげて野次馬のように現れて、被告人を捕まえるの が 見 えたと証言しました。

このあとから現れた男が声をあげて被告人をつかんだ状況 を 証人は「騒ぎ」と表現していたように思われます。

裁判長は、「青物横丁から大森海岸あたりまでうとうとしていたのなら、翌日、ニュースで 痴 漢と知った時には、うとうとしている間に痴漢があったと考えるのが自然ではない で すか」との疑問を証人に投げかけました。

証人の回答が質問に直結しない部分が多かったので何度か裁判長が繰り返し聞き 返 しましたが、証人がはっきり答えているのに質問を繰り返したということではあり ま せん。

あくまで裁判長は質問に対する回答を求めたということだと思います。

証人は、@品川から青物横丁までは被告人をはっきり見ていた。 右手を吊革につかまり、ぐったりしていた。誰とも密着していなかった。 証人が観察していた時間に痴漢の素振りは一切無かったことを証人ははっきり 記 憶している。

A大森海岸以降で、騒ぎ(なにかざわついた感じ)がして見ると、被告が二人の 男 に押さえ込まれていた。 最初の男は声も発さず、被告人も声を発さず、変な雰囲気だった。足を踏んだ な どでからまれているのかと考えた。二人目の男は野次馬のような男で、少し騒いでいた。証人が「騒ぎ」と言って い るのはこの二人目の男が声をあげて被告人をつかんだことを指しているようでした 。

B翌日、ニュースで痴漢事件と知って驚いた。車内暴力というか、男に因縁をつ け られて電車を降りていったと思っていた。

C事件の詳細については、報道でも聞いていないし、弁護士も一切説明してくれ なかったので、具体的にどこで何があったのかは知らないが、当初から、痴漢事件 と 聞いて、「変だなー」と思っていたと証言しました。 検察官が痴漢事件がどこであったのか知っているのだろうと繰り返し問い詰めま し たが、「知らない」と答え、それでも執拗に検察官が「品川から蒲田の最初の3分 の1、真ん中の3分の1、最後の3分の1のどこだと思うか」としつこく聞かれれ ると、「それだったら、最後の3分の1じゃないんですか!」と腹を立てたように 証 言しました。検察官は期待と異なる証言が示されたのか、絶句していました。証人 が 本当に事件の具体的内容についてをほとんど何も知らないということことが誰の眼 に もはっきりと分かる受け答えをしていました。

D裁判官から「あなたがうとうとしている間に犯行があったのだとしたらそれは 分 からないのですね。」と質問された際には、「はい、それは分かりません。」とは っ きり答えていました。ありのままに真実を述べていることがよくわかる証言でした 。 検察官からの「弁護人から事件がどこで起きたのかを聞いているのではないか」と の 質問に対しては、「まったく聞いていない」と答えました。

証人の証言のポイントは以下のようなものになります。青物横丁までの様子で、痴漢をしている可能性はゼロだったこと、大森海岸以降 の 状況を見て、車内暴力が起きたのかと考えたこと、翌日にニュースで痴漢事件と聞 いて、「変だなー、車内のトラブルで男性にからまれたように見えたのに」という 感 想をニュースを聞いた瞬間から持っていたことを証言しました。裁判長はこの説明 で 納得したように見えました。

裁判長は事件発生時刻が品川出発直後からの2、3分の間であることをこれまで の 公判の証言などで十分に知っており、「青物横丁から大森海岸あたりまでうとうと し ていたのなら、翌日、ニュースで痴漢と知った時には、うとうとしている間に痴漢 があったと考えるのが自然ではないですか」と証人に質問したのは、証人がニュー ス を聞いた時にすぐに痴漢事件だったのだと納得しなかったのはなぜかという素朴な 疑 問を提示したまでだとうかがわれます。証人は被告人が痴漢行為をまったくしてい な い場面をしっかりと見ていたために、痴漢事件と聞いて強い違和感を感じたのだと 傍 聴人には感じられました。

日刊スポーツは、証人が電車が入ってきてすぐに、人の列の後ろに並んで電車に 乗ったと証言したことから、被告人が先に電車に乗っていたのはおかしいとの記事を 掲 載していますが、被告人質問で被告人は、被告人が電車に乗った時は車内はまだす い ていて、その後何人も乗客が乗ってきて発車時点では混んだと供述しています。

被告人は改札を通るときに目の前に電車が止まっているなと感じたことを証言し て いますが、改札を通過する瞬間から電車に乗る瞬間までの記憶が途切れており、目 の 前の電車にそのまま乗ったのかどうかは判明していません。

被告人が改札を通過した時には被告人が乗った電車はまだ駅に到着していず、ふ ら ふらとホームを歩き人待ちの列の先頭付近から、その後に到着した電車に乗りこん だ 可能性があります。

被告人は電車のドアとドアの間のゾーンに立っていたそうですが、証人はドアを 入って左側の椅子席のゾーンに入ったところ、たまたま運良く自分の前に座っていた 乗 客が急に電車を降りて、席に座ることができたと証言しました。

一部のネットに酔っていた被告人がなぜ座らなかったのかとの疑問が提示されて い ますが、電車の座席はすべて埋まっていたのだと考えられます。証人も座席に空席 は なかったと証言しました。

また、証人は車内は混んではいない、「まばら」の乗客だったと証言しましたが 、 こは椅子と椅子のあいだのスペースのことで、座席は満席であり、出入り口付近 の 四角のゾーンは人が触れ合う程度(表現は違うかもしれないがこのような意味)だ っ たと証言しました。

快速特急電車で品川から青物横丁までの所要時間は2、3分だそうです。
起訴状では、犯行時刻は10時8分から10時10分の2分間とされています。 電 車の品川発時刻は10時8分です。

犯行は発車後すぐに始まって、トータルで2、3分とされています(各種情報を 総 合して)。検察側目撃者が公判で、最初は「痴漢行為に気付いたのは電車が出発し て から1、2分してから」と証言しました。ネットやマスコミではこれを根拠に弁護 側 証人の証言について、「うとうとしたあとに犯行があったのなら証人は気付かなか っ たはず」として、弁護側証人の証言が被告人の無実を証明することにはつながらな い とする見解が流布されています。しかし、この指摘はまったく的外れです。

検察側 目 撃 者の「品川駅を出て1、2分たったころに痴漢行為に気付いた」との証言に対し て、検察官は「時計などで確認したということではないのですね」と確認し、さらに 、「感覚としては品川駅を出て、割とすぐという感じですか」と聞き、目撃者は「 はい。そうです。」と答えました。犯行時刻を被害者供述に合わせて、10時8分 か ら10時10分ころに合わせるやり取りを公判で展開したものと思われます。被害者も犯行時刻については起訴状とほぼ同一の内容を証言したと思われます。

昨日の証人は、電車が品川駅を出発してから青物横丁を通り過ぎるまでの間は被 告 人の様子をしっかり見ていたと証言しています。

品川を出発してから青物横丁を通過するまでの時間は2、3分になります。
したがって、証人の証言は事件の犯行時刻の被告人の様子をはっきりと目撃した も ので、右手を吊革につかまり、うなだれて酔った様子で誰とも密着せずに立ってい た というものです。被害者供述、検察側目撃者の供述する犯人と被告人は別人である こ とがはっきりと示されたと言えます。

被告人が有罪になるためには、弁護側証人が偽証をしていることが必要になりま すが、弁護側証人の証言は、詳細で具体的、臨場感があり迫真性がある、虚偽を述 べ る動機がない、供述内容が不合理・不自然でない、経験則に背反していない、主観 的 確信に満ちている、という要素を満たしているもので、裁判所が弁護側証人の証言 を 偽証とするのは極めて困難であると感じられました。

弁護側立証は、被害者供述、目撃者供述を大枠では否定せず、別に真犯人が存在 し、被告人が誤認されて取り押さえられたとの仮説に従っていますが、昨日の証人証 言 はこれを補強するものになっています。

他方、検察側目撃者の証言は @ 被告人が 眼鏡をかけていたことを覚えていない A 勾留中の被告人が著しく痩せたことに気付かなかった B 目撃者が証言した電車内での被害者の位置が被害者供述などとあまりにも矛 盾 し ている (目撃者のネクタイ結び目から、目撃者と被害者の間に立っていた女性の左肩ま で の距離が40センチメートル、目撃者のネクタイ結び目から、被害者の左肩までの 距 離が77センチメートル、目撃者はドアとドアの間の四角のゾーンの4本の吊革用 手 すりのうち、進行方向に対して垂直の列車前方の手すりに下がる三つの吊革のなか の、進行方向左側の吊皮を左手で握っていた、と証言しました。これを車内図にあて は めると、被害者の位置は列車進行方向に対して右側のドア付近になってしまいます 。 被害者の位置がドアとドアの間の中央付近とする他の関係者の証言と著しく矛盾し て しまいます。

この点はmojoさん(koufu.exblog.jp)が図解してくれました。) を含んでいます。

昨日の公判での補充の被告人質問で、 被告人の体重が 事件時   67、8キログラム  →    12月公判、1月公判時  58キログラム」    →    現在    64キログラム と推移したことが明らかにされました。昨年12月、本年1月時点では被告人は と て もやつれていたことが確認されていますが、検察側目撃者はこのことに気付かな かった証言をしています。

昨日の弁護側証人が「騒ぎ」と証言したのは、二人目の逮捕者が声をあげて被告 人 を取り押さえたころのざわつきを指しているようです。被害者が声を出したことに つ いて、被告人は被害者が「やや大きめの声をあげた」と証言しましたが、「子供が い るのに」といった言葉しか聞いていません。座席に座っていて、うとうとしていた 昨 日の証人に、線路の音や他の音楽を聞いていた人の騒音などの影響で被害者の声が 聞 こえなかったとしても、まったく不思議はないと思われます。

補充の被告人質問では、目撃者が被告人が眼鏡をかけていたことを覚えていない と 証 言したことについて、弁護側が日本大学のI教授に依頼して心理学実験をしても らっ たことが明らかにされました。

事件当日の状況を再現して被告人が眼鏡をかけて 、 目 撃者の目線から撮影した9枚の写真を、学生に1枚につき8秒ずつ、合計72秒 見 せて、3日後に集まってもらい、アンケートを取ったところ、20人中 19人が眼鏡をはっきりと覚えていたとの結果を被告人がI教授から直接聞いたとの こ とでした。被告人がかけていたメガネは特徴のあるもので、写真では顔の印象より も 眼鏡の印象の方が強く残るものだったと被告人は供述しました。犯人の顔を注意し て 見ていた目撃者が被告人が眼鏡をかけていたかどうか分らないと証言したことは、 目 撃者が被告人とは別の人物を見ていた可能性を強く示唆するものです。

検察側目撃者証言の信ぴょう性は非常に低いと判断できます。

以上が傍聴人から見た7月4日公判のポイントです。